前立腺がん:前立腺肥大症との違い

前立腺がんと前立腺肥大症は、前立腺の中で発症する場所が異なるまったく違った病気です。

前立腺がんは前立腺の外腺に、前立腺肥大症は内腺にできる病気なので、前立腺肥大症から前立腺がんに進展するということは、まずありません。

2つの病気が同時に起こる場合もあるため、前立腺肥大症があるから、自分は前立腺がんにはならないと考えるのは間違いです。

別にかかる可能性のある病気として、気になる症状があった場合には、早めに泌尿器科を受診しましょう。




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前立腺がんの骨転移:症状

前立腺がんの症状が進行していくと、癌細胞は他の臓器にも広がっていきます。

前立腺がんにおいて骨は転移しやすい場所の一つであります。しかも体中の色々な場所が候補となるだけに、生じる可能性のある部位も広範に渡ります。

骨転移が生じると、その部分に痛みを感じるようになるため、腰痛や背中の痛みとして認識され、整形外科で調べてもらったところ、前立腺がんの症状であったことが判明する例もあります。

前立腺がんの骨転移が原因で骨がもろくなり、病的骨折を起こすことがあり、これがきっかけになって運動量が減少し、筋力や体力の衰えにつながってしまうこともあります。

さらに骨がもろくなって脊椎が押しつぶされてしまい、神経を圧迫して麻痺を起こすこともあります。このように、前立腺がんが骨転移を起こすと、様々な問題を起こすことになります。




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前立腺がんの骨転移:生存率と余命

前立腺がんが骨転移を起こしていると、治療後の経過は悪くなります。

��年生存率は30%程度となり、平均余命が2年から3年となっています。

症状の進行が遅いため、他の癌と比べると期待余命が長い傾向にあります。

その間の生活を症状が邪魔しないようにしておく必要があります。

治療は余命を延ばすだけではなく、生活の質を維持するためにも大切です。




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前立腺がんの骨転移:メカニズム

血液の流れを介して前立腺がんの癌細胞が運ばれ、本来は古くなった骨を壊す役目を負っている破骨細胞の助けを得て居場所を得て増殖します。

癌細胞が破骨細胞を使って増殖するスペースを確保し、増殖すると破骨細胞をさらに働かせ、転移が進むのです。

前立腺がんの骨転移が起こりやすい場所としては、骨盤骨・肋骨・大腿骨があります。

骨は全身の様々な場所に配置されているものの、リスクは均等に分散されているわけではなく、一部に偏っています。

骨転移によって痛みを感じやすい場所としては腰や背中、太ももといった場所です。



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前立腺がん治療の名医:北海道・東北

塚本泰司
札幌医科大学付属病院
北海道札幌市中央区南1条西16-291  ℡011-611-2111 


羽渕友則
秋田大学医学部付属病院
秋田県秋田市本道1-1-1 ℡018-834-1111


荒井陽一
東北大学医学部付属病院
宮城県仙台市青葉区星陵町1-1 ℡022-717-7000




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前立腺がん治療の名医:関東

赤座英之  筑波大学付属病院
   茨城県つくば市天久保2-1-1
   ℡029-853-3900

市川智彦  千葉大学医学部付属病院
  千葉県千葉市中央区亥鼻1-8-1
   ℡043-222-7171

鈴木和浩  群馬大学医学部付属病院
  群馬県前橋市昭和町3-39-15
   ℡027-220-7111

堀江重郎  帝京大学医学部付属病院
  東京都板橋区加賀2-11-1
   ℡03-3964-1211 

村井勝  慶應義塾大学病院
   東京都新宿区信濃町35
    ℡03-3353-1211  

木原和徳  東京医科歯科大学医学部
   付属病院 東京都文京区湯島1-5-45
   ℡03-3813-6111

永田幹男  聖路加国際病院
   東京都中央区明石町9-1
    ℡03-3541-5151

窪田吉信  横浜市立大学医学部
   付属病院 神奈川県横浜市金沢区福浦3-9
   ℡045-787-2800

馬場志郎  北里大学病院
    神奈川県相模原市北里1-15-1
    ℡042-778-8111 




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前立腺がんの症状

早期の症状
全く症状がないことが多い


よくある症状
癌が大きくなって尿道が圧迫されるようになってくると主に排尿に関連した症状が出現します。

排尿困難(尿が出にくくなる)
頻尿(尿の回数が多くなる)
残尿感(尿が出きらない感じがする)
尿意切迫(尿意を感じると我慢できなくなる)
尿閉(尿道が強く圧迫されると尿が出なくなる)
下腹部の違和感

前立腺肥大症に似ていますし、前立腺肥大症も高齢者の病気なので、前立腺肥大症と前立腺癌が両方起こっていることもあります。しかし両者は別の病気であり、前立腺肥大症が前立腺癌になることはありません


進行したときの症状

癌が尿道や膀胱に広がると、排尿に関連した症状に加え、排尿以外の種々の症状が出現します。

血尿(尿に血液が混じる)
頻尿の増悪
尿失禁(尿が漏れる)
水腎症(癌が尿管を押しつぶしてしまうと尿がうまく流れなくなって腎臓が腫れる)
血精液症(癌が精嚢に広がると精液に血が混じることがある)
背部痛・腰痛、骨折

癌が骨に転移を起こすとその部位に痛みを生じることがあり、背部痛や腰痛として感じられたり、手が痺れたりすることもあります。転移をした部分の骨が脆くなると骨折をしやすくなります。


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前立腺がんが増えた原因

日本で急激に前立腺がんの患者数が増加している原因として、食生活の欧米化が考えられます。

食生活が欧米化したことで高タンパク、高脂肪の食事が増え、それが前立腺がんや前立腺肥大症増加の大きな原因になっているのです。この事は、欧米で前立腺がんの患者数が多いことからも伺えます。

平均寿命が延びたことで高齢者が増加した事も大きな理由の1つです。前立腺がん患者の90%以上は60歳以上であり、ガンの発見も50歳を超えてからがほとんどです。

前立腺は男性ホルモンによって支配されており、高齢化に伴う男性ホルモンの影響が前立腺の病気発症に関わっていると考えられています。

このほか、検査技術の向上によって前立腺がんの患者数が増加した事も考えられます。

前立腺がんの初期には自覚症状がほとんどないために、前立腺がんが発症している事に気付かないケースも多々ありました。

検査技術が向上したことで、前立腺がんが人間ドックなどで早期に発見できるようになってきています。前立腺がんは他のガンと同様に、早く発見できればそれだけ完治の可能性も高くなるのです。





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前立腺がんの再燃による排尿困難と血尿

再燃した場合には前立腺が大きくなっていることがあり、排尿障害や血尿を引き起こすことがあります。

排尿があまりに難しくなった場合には、外科手術が行われます。

尿道から小型カメラがついている内視鏡を入れて、前立腺をモニターで観察しながら、尿道を圧迫している前立腺がんを切り取るという手術です。

前立腺が大きくなった部分だけ切り取るので、この治療でがんが治るわけではなく、あくまでも排尿障害を治すためのものです。

排尿困難がある場合、前立腺に放射線をあてる方法も効果があります。
これは、前立腺から出血がある時にも効果を発揮します。

すでに前立腺がん治療の時に放射線療法を試みている人には、この方法は使えません。
再び放射線を使うと、強い副作用が出てしまうからです。

最初の放射線療法の時に、がん細胞を死滅させるために、正常な組織が受けられるぎりぎりの量の放射線を浴びせています。
その状態から追加で放射線を当てると、直腸から出血するなどの強い副作用が出てしまうのです。

直腸のほかにも尿道が狭くなったり、他の組織が傷つくなど放射線治療の傷跡は意外と大きいものです。




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前立腺がんの末期症状

前立腺がんの末期症状としては、尿が完全に出なくなることや、全身の倦怠感、骨転移による骨の痛みなどが挙げられます。

末期になると、治療によって症状を大きく改善するのは難しくなり、5年生存率も下がります。

初期症状の場合と末期の前立腺がんの深刻さの違いを端的に表しているのは、5年生存率です。

5年生存率を見ると、病期がステージⅠからステージⅢまでの間はすべて100%であるのに対し、ステージⅣになると51.1%と、急に半減します。

他の癌と比べると、前立腺がんは末期でも生存率が高いと言えますが、良好な数字ではないです。

腰痛のために病院を訪れたら、それが骨転移によるものであることが発覚し、すでに前立腺がんが末期症状を呈していることを知らされるというケースもあります。病院では骨シンチグラムによって、骨への転移を調べることができます。

特に65歳以上の罹患率が高いため、年齢が高くなってきたら、よりいっそう注意してください。

最近の研究では、遺伝子治療を行うことによって、前立腺がんが末期になっていても、延命効果を得られるという結果も発表されています。

これは、ガン細胞にウィルスを投与することによって、症状の進行を遅らせるもので、骨転移が少ない患者さんには余命の延長も期待できるというものです。




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前立腺がんの頻度

日本では人口10万人あたりの男性が1年間に前立腺癌にかかる人数は全年齢を合わせると10人程度で癌死

亡の部位別順位では10位前後です。

高齢化社会の到来や食事の欧米化などにともない今後その頻度は急増していくものと考えられています。

年齢別にみると、45歳以下の男性ではまれですが、50歳以降加齢とともに対数的にその頻度は増加し70歳代では10万人あたり約100人、80歳以上では200人を超えます。

このように前立腺癌は典型的な年齢依存性の癌といえるでしょう。

前立腺癌の罹患率は国別や人種差が大きく、北米がもっとも多く、ついでオーストラリア/ニュージーランド、カリブ海地域、西欧、北欧と続き、日本は北米の10分の1ほどと国際的にはその頻度は低いほうです。

また人種では黒人に一番多くついで白人、黄色人種となってます。



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前立腺がんの危険因子

前立腺がんの危険因子として考えられているのは脂肪の多量摂取、肥満などです。

他のがんのように喫煙との関係は否定的な報告が多いようです。また飲酒との関係も明らかではありません。

脂肪の多量摂取については、同じ日本人でもハワイ在住の日系人と日本在住の日本人の3.5倍から6倍といわれています。

おそらく食事の欧米化、すなわち脂肪の多量摂取と関係しているのではないかと考えられています。

肥満と前立腺癌の関係については特にBMI(body mass index[(体重(kg))/(身長(m))2])と前立腺癌リスクとの関係が多く報告されており、関係があるといえるでしょう。

その他活発な性活動などが前立腺癌のリスクを高めるといわれています。

前立腺がんのリスクを下げる要因としては、特に最近食品との関係が注目されています。

トマトなどに含まれるリコピン(lycopene)や豆類(とくに大豆食品)に含まれるイソフラボン(isoflavone)についてはいくつかの報告がみられます。

前立腺がんと遺伝要因との関係については、父親が前立腺癌だった場合前立腺癌発生リスクは1.65-3.77倍、兄弟の場合は2.57-3.00倍、父親、兄弟または息子のいずれかの場合は2.26-8.73 倍であり、家族歴は前立腺癌の確立したリスクファクターといえるでしょう。




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前立腺がんの死亡率

前立腺がんは他の癌に比べ高齢者に多く,全世界での前立腺がん年齢調整罹患率(年齢調整罹患率:/10 万人/年)は 19.8 であり,肺癌(37.5),胃癌(24.5)に次いで 3 番目でです。

地域差が大きく,一般的に先進国の罹患率は発展途上国比べ高齢者に多いがんです。

わが国の男性の年齢調整罹患率(基準人口は昭和 60 年のモデル人口)は,前立腺癌では 19.9 と,胃癌,肺癌,結腸癌,肝臓癌,直腸癌に次いで6 番目に高く,男性癌全部位の 5.3%を占めます。

将来の前立腺がん罹患数の増加に関しては,2020 年には 78,468 人と肺癌に次いで男性癌の 2 番目になると予測されています。

全世界での年齢調整死亡率は 8.2 であり,肺癌(33.7),胃癌(19.1),肝癌(14.2),大腸・直腸癌(10.7)に次いで 5 番目です。

わが国における 2001 年の男性の年齢調整癌死亡率は,前立腺癌は 8.4 であり,肺癌,胃癌,肝臓癌,結腸癌,膵癌,食道癌,直腸癌についで 8 番目に高く,男性における癌死亡原因の 4.2%を占めています。

今後の死亡率の傾向は,2000 年の前立腺癌死亡率の実測値に対して 2020 年の推定値は 2.8倍になると予測されています。




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前立腺がんの発症のリスク

前立腺がんは男性だけに発症するがんで、さらに高齢の方に多く発症しています。

従って男性の高齢者に高いリスクがあります。

日常の食生活においては乳製品をよく食べる方は、あまり食べないという方に比べると1.5倍のリスクが高まるといわれています。

乳製品は健康な身体作りに必要なものですから、この結果だけで判断することはできませんが、乳製品が前立腺がんに発症する原因になるかと言えば、乳脂肪とカルシウムが前立腺に悪い影響を及ぼすと考えられています。

職業においてもその種類によってリスクが異なります。これは職業によって変わるものではなく、勤務形態によってリスクが異なります。

これは日勤を行っている方と夜勤だけ行っている方と、昼夜交代で勤務している方を調査したところ、日勤だけを行っている方の前立腺がんに罹るリスクを1とすれば、夜勤だけを行っている方が1.5倍ほどのリスクが伴い、昼夜交代勤務を行っている方はそのリスクは3倍以上と、高い結果が出ました。

職業で昼夜交代勤務を行っている方はたくさんおられますが、この昼夜勤務の方が前立腺がんのリスクが高い理由は、人が持っている体内時計に関係しています。

人の身体が刻む体内時計は24時間を周期に生活のリズムを刻んでいますが、これが数日の間隔で不規則に変わることで、発症のリスクが高まります。




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